エッセイ「CDを積み上げる」より3作品を公開
「CDを積み上げる」は岩波書店の雑誌『図書』にて2020年1月から2022年12月まで連載された音楽エッセイです。これまで未公開だった作品群より、3作品を公開しました。
姉妹ふたりに、幼い頃からの同性の友人がひとり加わり、女性三人のグループが生まれた。その自分たちのグループをフェミナと名づけた。手元にあるのは三作目の『真珠と貝殻(Perlas & Conchas)』だ。逃れられないものとして、フェミナは、自分たちが育ったアルゼンチンの小さな町、サン・マルティン・デ・ロス・アンデスをあげている。音楽からも逃れられなかった。南米の民族音楽だ。逃れられなかったものは、最終的には、言葉だろう。生まれ育ったアルゼンチンの小さな町にあった自然環境。それから南米のさまざまな民族音楽。これらは彼女たちのもっとも深いところへ浸透して、叙情を作った。言葉がその叙情に介在している。
・フェミナ『真珠と貝殻(Perlas & Conchas)』(2019)
(『図書』岩波書店/2021年12月号掲載)
ザ・スリー・グレイセスが結成されたのは1958年だったという。年表を見ると、5月に「テレビ受信契約数100万を突破」「日劇でウエスタン゠カーニバル。この頃ロカビリー大流行」「一万円札発行」などという記載がある。ザ・スリー・グレイセスは日本におけるTVの始まりと重なっている。ザ・スリー・グレイセスはザ・グレイセスとも言い、ギリシア神話に登場する三姉妹の女神のことだ。美、優雅さ、喜びを、三姉妹は司るという。日本の女性コーラスのザ・スリー・グレイセスは、1959年にデビューし、最初のシングル盤が市販されたのは1961年だった。「山のロザリア」と「カチューシャ」の2曲だった。
・『スリー・グレイセス 山のロザリア』(アルバム/2010)
(『図書』岩波書店/2022年1月号掲載)
「日本の流行歌スターたち」というCDのシリーズの第15番目が市丸だ。24曲が収録してある。『三味線ブギウギ』を僕は1950年にはラジオで聴いている。市丸の没年は1997年だから、『三味線ブギウギ』を録音してから、市丸は47年あるい48年生きたことになる。「猫も杓子もブギウギ」という部分があり、猫も杓子も、とはなにのことかと、もっとも身近な大人だった母親に訊いた。そこらへんにおる誰もかれもという意味や、と母親が答えたのをいまも覚えている。猫と椅子には論理的な関係があるのかと重ねて訊いた僕に、そんなもんあらへん、と母親が答えたのも、僕は覚えている。
・『日本の流行歌スターたち』[15]市丸
(『図書』岩波書店/2022年2月号掲載)
2026年8月21日 00:00 | 電子化計画


