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エッセイ「掌の中の物語」より6作品を公開

「掌の中の物語」は東京メトロ主要駅のマガジン専用ラックで配布されていたフリーペーパー『GOLDEN min.』(2006〜2008年/スターツ出版)に連載されていたショート・エッセイです。本日はSTORY 01からSTORY 06までの6話を公開しました。

 太平洋戦争後のアメリカに大量に出まわった、主として食品や菓子類のパッケージは、もの心ついたばかりの僕にとっては、愛すべき遊び相手だった。大量生産され大量に消費される大衆消費財の、戦後という新しい時代における、もっともわかりやすい端的なありかたのすべてを、パッケージというものは見事に体現していた。その事実はいまでもなんら変わらないままに継続されている。

(『GOLDEN min.』No.10/2007年2月号掲載)

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 リターというよく目にするブランドのチョコレート菓子だ。ミルク・チョコレートをベースに、そのなかにいろんなものが入っている。ヨーグルト。ヘーゼルナッツ。ヌガー。コーンフレークス。マージパン。マージパンとは、アーモンドをすりつぶしたものだという。一辺が約四センチの正方形で、種類の重複を含めて九個が、蓋のない台枠のような箱に入っていて、九個がすべて揃って斜めに倒れた状態で、透明な被膜にくるんである。

(『GOLDEN min.』No.11/2007年3月号掲載)

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 ひとりの女性編集者が、日本からコペンハーゲンへ取材にいった。生活とデザインの深い関係について、という企画をめぐる取材だった。取材は楽しいものだった。生活のあらゆる領域で、美しいデザインによってすべてのものがなんの無理もなく有機的に統合されている様子を見るのは、感激の連続だった。機内食のパッケージの忘れがたい素敵さの記念に、ソルト・アンド・ペパー、砂糖、おしぼりなどを、往復ともに使わずに持ち帰った。今回はそれを提供してもらって、僕が写真に撮ってみた。

(『GOLDEN min.』No.12/2007年4月号掲載)

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 原産国ノルウェー、スタビレーというブランド名の、サバのトマト・ソース煮の缶詰だ。「缶ごと湯せんして」食べる。あるいは、トマト・ソースと分けたサバを軽くオイル焼きしてもおいしい、ということだ。子供の頃からいろんな缶詰に接して来たが、この缶詰のオブジェぶりには素晴らしいものがある。強度を増すために、缶のあちこちに、まさにその部分にふさわしいかたちで、溝が何本も作ってある。この溝が、ぜんたいのかたちに対して、独特の雰囲気をあたえている。

(『GOLDEN min.』No.13/2007年5月号掲載)

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 去る吉日、銀座で、写真にある二隻のスピードボートを手に入れた。アウトボード・エンジンの小型ランナバウトだ。赤いエンジンの上部にある白いつまみをまわして、ゼンマイを巻き上げる。そのゼンマイが戻っていくときの力が、歯車を介してスクリューを回転させる。エンジン部分の下半分は、小さなスクリューを含めて、スケール・モデルの雰囲気をかすかに感じさせる。船体の造形も、かえって興をそぐような馬鹿げたデフォルメがされていず、素朴で実直なリアリズムにはほのかに懐かしさすら覚える。

(『GOLDEN min.』No.14/2007年6月号掲載)

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 縦が66ミリ、横幅は44ミリ、そして厚さが11ミリ。掌サイズと言うよりも、指先サイズ、と僕は呼びたい。ペパミント風味のチューインガムの粒が、平均して十二粒ほど入っている。デンマークで作られフランスの会社に納入されたもののようだ。街角で新聞といっしょに買ったりするこのような小さな商品を、僕は街角商品と呼んでいる。なぜこれが僕のところにあるのか。東京で買った記憶はない。フランスへいって来た誰かが、あいつにはこれでいいと、おみやげのかわりにくれたのだろう。僕にはこれでいい。

(『GOLDEN min.』No.15/2007年7月号掲載)

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2026年10月16日 00:00 | 電子化計画

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